生成AIのセキュリティ対策|情報漏洩など脅威と技術・組織・人の防御策
更新日:2026.07.15
生成AIのセキュリティ対策を情シス・経営者向けに体系的に解説します。情報漏洩・プロンプトインジェクション・シャドーAIなどの脅威を整理し、生成AIの情報漏洩対策を最重要テーマに、技術・組織・人の三層での防御策と公的ガイドラインへの準拠までをまとめました。

「社員がChatGPTなどの生成AIを使い始めているが、機密情報を入力していないか不安だ」「便利なのは分かるが、情報漏洩やコンプライアンスのリスクをどう抑えればよいのか」——生成AIの業務活用が当たり前になるにつれ、多くの企業でこうした声が聞かれるようになりました。生成AIは生産性を大きく高める一方で、従来のセキュリティ対策だけでは想定しきれない新しいリスクを持ち込みます。本記事では、生成AI セキュリティ 対策を検討する情シス・セキュリティ担当や経営者に向けて、情報漏洩をはじめとする脅威の全体像を整理し、技術・組織・人の三層でとるべき現実的な対策を、段階的に進められる形で解説します。過度に恐れて禁止するのでも、無防備に使わせるのでもなく、リスクを正しく見積もって使いこなすための土台づくりが本記事のねらいです。
生成AIのセキュリティ対策が「特別」な理由
従来型の対策
- ✓外部からの攻撃・侵入を防ぐことが主眼
- ✓マルウェアや不正アクセスが主な脅威
- ✓境界防御とアクセス制御が中心
生成AIで新たに必要になる視点
- △正規の利用者が自ら情報を渡してしまう
- △入力・学習・出力の各段階にリスクがある
- △利用ルールと入力内容そのものの管理が中心
これまでの情報セキュリティは、外部からの攻撃や不正アクセスをいかに防ぐか、という「防御」が中心でした。しかし生成AIのリスクの多くは、悪意ある第三者ではなく、業務を効率化しようとした社員が善意で機密情報を入力してしまう——という「正規利用の中で起きる漏えい」に由来します。ファイアウォールやウイルス対策では、この種のリスクは止められません。
さらに生成AIは、入力(プロンプト)・処理(学習や推論)・出力(生成結果)のそれぞれの段階に固有のリスクを抱えています。入力段階では機密情報の流出、処理段階では入力データの学習利用、出力段階では誤った情報(ハルシネーション)や著作権侵害の混入といった具合です。従来の「境界を守る」発想に、「どんな情報を、どのツールに、どう入力させるか」という利用時のコントロールを重ねる必要がある点が、生成AIセキュリティ対策の特徴です。だからこそ、後述するように技術だけでなく組織のルールと人の教育まで含めた多層的な備えが欠かせません。
生成AI利用に潜む6つの主要リスク
生成AI セキュリティ 対策を考える前提として、まず「何が危ないのか」を全体像として押さえておきましょう。上位の解説記事や公的資料でも共通して挙げられるのが、次の6つのリスクです。専門用語ではなく「何が起きるか」で捉えると、経営会議での説明にも使いやすくなります。
| 脅威 | 何が起きるか | 主な発生原因 |
|---|---|---|
| 情報漏洩 | 入力した機密・個人情報が外部に流出する | 学習利用設定・履歴の蓄積・誤送信 |
| プロンプトインジェクション | 不正な指示でAIを誤動作・情報開示させられる | 外部データや悪意ある入力の混入 |
| ハルシネーション | もっともらしい誤情報を出力し業務判断を誤らせる | 生成AIの仕組み上の限界 |
| シャドーAI | 会社が把握しない無許可ツールが野放しになる | ルール不在・利便性優先の個人判断 |
| アカウント・APIキーの漏えい | 認証情報の流出で不正利用・課金被害が発生 | キーの平文管理・共有・権限過多 |
| 著作権・コンプラ違反 | 生成物の権利侵害や法令違反で責任を問われる | 出力の無確認利用・利用規約の未確認 |
情報漏洩
最も切実で、被害の想像がつきやすいリスクです。入力した内容がAIの学習に使われたり、履歴として残ったりすることで、社外秘や個人情報が意図せず外部に渡る可能性があります。詳しくは次章で正面から扱います。
プロンプトインジェクション
AIに与える指示(プロンプト)に不正な命令を紛れ込ませ、本来の制約を回避させたり、内部情報を開示させたりする攻撃手法です。Webページや外部ファイルを読み込ませて処理させる仕組みでは、その中に仕込まれた悪意ある指示に反応してしまう恐れがあります。自社サービスに生成AIを組み込む場合に特に注意が必要です。
ハルシネーション(もっともらしい誤り)
生成AIは、事実と異なる内容を自然な文章で出力することがあります。これはセキュリティの穴というより仕組み上の限界ですが、誤った情報を鵜呑みにして社外に出せば、信用毀損や損害につながります。数字・固有名詞・法令の内容は人が一次情報で検証する運用が前提です。
シャドーAI(無許可利用)
会社が許可・把握していない生成AIツールを、社員が個人の判断で業務に使っている状態を指します。利便性が高いぶん自然発生しやすく、管理者が気づかないうちに機密情報が外部サービスに蓄積されていく——という最も見えにくいリスクです。
アカウント・APIキーの漏えい
生成AIサービスのログイン情報やAPIキーが流出すると、なりすまし利用や高額な従量課金の被害を受けます。キーをソースコードに直書きしたり、チャットで共有したりする運用は特に危険です。
著作権・コンプライアンス違反
生成物が既存の著作物に酷似したり、他人の権利を侵害したりする可能性はゼロではありません。また、入力した個人情報の扱いが個人情報保護法に抵触するケースもあり得ます。出力をそのまま公開・商用利用する用途では確認の運用が欠かせません。
生成AIの情報漏洩対策【最重要テーマ】
6つのリスクの中でも、企業が最初に手を打つべきなのが生成AI 情報漏洩 対策です。ここでは「なぜ漏れるのか」を経路に分解したうえで、具体的な防ぎ方を整理します。
入力内容の学習利用
設定次第で入力した情報がモデルの学習に使われうる
履歴・ログの蓄積
会話履歴が事業者側やアカウント内に残り閲覧されうる
誤送信・誤共有
宛先や共有範囲の誤りで生成結果が社外に渡る
シャドーAI経由
無許可の無料ツールに機密情報が入力される
生成AIの情報漏洩が従来の漏えい事故と異なるのは、「外部から盗まれる」のではなく「利用者が自ら渡してしまう」点にあります。実際、2023年には大手電機メーカーで、社員が半導体関連のソースコードや社内会議の内容をChatGPTに入力し、機密が外部に流出した事例が報じられました(後述)。悪意はなく、業務を効率化しようとした結果起きた事故だという点に、この問題の難しさがあります。
漏えいを防ぐための対策は、次の層で段階的に組み立てます。
- 入力する情報を絞る:氏名・連絡先・契約情報などの個人情報、未公開の財務・技術情報、顧客から預かった情報は原則入力しない、というルールを最初に決めます。「社外の人に見せられない情報は入力しない」が分かりやすい基準です。
- 学習利用をオフにできる契約・設定を使う:多くの法人向けプランやAPIでは、入力データを既定でモデル学習に利用しない旨が各社のポリシーで示されています(本記事執筆時点)。ただし契約形態や設定により扱いは異なるため、導入前に必ず対象サービスの最新のデータ利用ポリシーを確認してください。
- 履歴・ログの管理:会話履歴の保存範囲やアクセス権を確認し、必要に応じてオフにするか、管理者が統制できる法人アカウントに集約します。
- マスキング・匿名化:どうしても実データを扱う場合は、固有名詞や数値を伏せてから入力する運用を徹底します。
- 入口の一本化:無許可ツールを使わせない(シャドーAI対策)ことで、そもそも漏えいの経路を減らします。
個人情報を含む入力については、個人情報保護委員会も「利用目的の達成に必要な範囲内であることを十分に確認する」よう生成AIサービスの利用に関する注意喚起を公表しています。まず自社が扱う情報の中で「何を入れてよいか/だめか」を線引きすることが、情報漏洩対策の出発点です。
シャドーAI(無許可利用)をどう抑えるか
情報漏洩の温床になりやすいのがシャドーAIです。禁止しても、業務が楽になる以上、社員は水面下で使い続けます。ここで有効なのは「禁止」ではなく「安全な選択肢を用意して、そちらに誘導する」アプローチです。
現実的な手順は次のとおりです。第一に、現状把握として、どのツールが実際に使われているかをアンケートやログから棚卸しします。第二に、会社として承認する生成AIサービス(法人プランなど、後述の安全な形態)を用意し、「これを使ってよい」と明示します。第三に、承認ツールを使うメリット(速い・安全・会社が費用負担)を伝え、無許可ツールを使う動機そのものを減らします。第四に、Webフィルタリングなどの技術で無許可サービスへのアクセスを制限しつつ、申請すれば追加できる柔軟な運用にします。
頭ごなしの全面禁止は、かえって隠れた利用を増やし、実態が見えなくなるという逆効果を生みがちです。「使わせない」より「安全に使える道を整える」ほうが、結果的に統制が効きます。
安全に使える生成AIサービスの選び方
法人読者が最も知りたいのが「結局、どのサービス・プランなら安全に使えるのか」という点です。ポイントは、入力データが学習に使われない契約形態を選ぶことと、管理機能で全社の利用を統制できることの2つです。代表的な利用形態を整理します。
| 利用形態 | データ学習の一般的な扱い | 向いている用途 | 注意点 |
|---|---|---|---|
| 無料の個人向けプラン | 設定によっては学習に利用されうる | 個人の学習・機密を含まない試用 | 業務での機密入力は避けるのが無難 |
| 有料の法人・ビジネスプラン | 既定で学習に利用しない旨が示されることが多い | 全社での日常業務利用 | 管理機能・契約条件を要確認 |
| API・クラウド基盤経由 | 既定で学習に利用しない旨が示されることが多い | 自社システムへの組み込み | 認証・キー管理を自社で設計 |
| 社内向け閉域構成・RAG | 自社が統制。外部学習に渡さない設計が可能 | 機密性の高い社内利用 | 構築・運用の体制が必要 |
※上記はあくまで一般的な傾向であり、データの取り扱いは各サービスの契約形態・設定・時期により異なります。「学習に使われません」と断定せず、導入前に必ず各社公式のデータ利用ポリシー(プライバシーページやデータ処理契約)で最新の条件を確認してください。確認日:2026年7月15日。
判断に迷ったら、「無料の個人アカウントで機密を扱うのは避ける」「業務利用は管理機能のある法人契約に集約する」という2点を押さえるだけでも、リスクは大きく下がります。機密性が特に高い情報を扱う場合や、自社データを踏まえた回答が必要な場合は、外部に情報を渡さない社内向けのセキュアな構成(社内文書を参照させるRAGなど)を検討する選択肢もあります。
セキュリティ対策の3つの層(技術・組織・人)
生成AIのセキュリティ対策は、どれか一つの施策で完結しません。技術・組織・人の三層を組み合わせて初めて機能します。それぞれの代表的な対策と、現場でつまずきやすい点を整理します。
| 層 | 対策の例 | 現場でのつまずき |
|---|---|---|
| 技術的 | 法人プラン/オプトアウト設定、アクセス制御、ログ監査、DLP、Webフィルタ、社内向け閉域・RAG | ツールを入れても運用ルールがなく形骸化する |
| 組織的 | 利用ルール、入力禁止情報リスト、利用申請・承認フロー、責任者の設置 | 文書は作ったが周知されず誰も読まない |
| 人的 | 全社員教育、事例共有、相談窓口、定期的な注意喚起 | 一度の研修で終わり、入社者に引き継がれない |
技術的対策
学習利用をオフにできる法人プランの採用、部署や役職に応じたアクセス制御、誰が何を入力したかを追えるログ監査、機密情報の入力を検知・遮断するDLP(データ漏えい防止)、無許可サービスへのアクセスを制限するWebフィルタリングなどが柱です。機密性の高い領域では、外部に情報を出さない社内向けの閉域環境やRAG構成の構築も選択肢になります。ただし、ツールを導入するだけでは機能しません。「何を守るために、どう運用するか」を決めてから選ぶことが重要です。
組織的対策
利用ルール、入力してよい情報・だめな情報のリスト、利用申請と承認のフロー、責任者の明確化といった「仕組み」を整えます。なお、利用ルールやガイドライン文書そのものの作り方は別記事「生成AIガイドラインの作り方」で扱う範囲とし、本記事は脅威と防御策に絞ります。
人的対策
最終的に情報を入力するのは人です。どんなに技術と組織を整えても、社員一人ひとりが「何が危ないか」を理解していなければ事故は防げません。全社員向けの教育、実際の事故事例の共有、迷ったときの相談窓口、定期的な注意喚起をセットで運用します。特に、新しく入社した人や異動者への引き継ぎが抜けやすいため、一度きりではなく継続的に回す設計が肝心です。
導入前後に確認すべき項目を、チェックリストとしてまとめておきます。
| 確認項目 | 目的 |
|---|---|
| 承認する生成AIサービスを決めたか | シャドーAIの発生を抑えるため |
| 入力禁止情報のリストを明文化したか | 情報漏洩の線引きを全社で共有するため |
| 学習利用の設定・契約条件を確認したか | 入力内容の二次利用を防ぐため |
| アクセス権とアカウント・キー管理を定めたか | 不正利用・なりすましを防ぐため |
| 出力の事実確認の担当を決めたか | ハルシネーションによる誤りを止めるため |
| 全社員への教育と相談窓口を用意したか | 人的ミス由来の事故を減らすため |
| インシデント時の対応手順を決めたか | 事故発生時の被害を最小化するため |
公的ガイドライン・フレームワークを対策の土台にする
自社ルールを一から考えるより、公的な基準に沿って設計するほうが、抜け漏れが少なく、社内外への説明もしやすくなります。生成AIセキュリティ対策で参照したい代表的な資料を整理します。いずれも改定される前提の文書のため、リンク先で最新版を確認してください。
| 資料・基準 | 発行主体 | 押さえるポイント |
|---|---|---|
| 情報セキュリティ10大脅威 2026 | IPA | 「AIの利用をめぐるサイバーリスク」が組織向けで第3位に初選出 |
| 生成AIサービスの利用に関する注意喚起 | 個人情報保護委員会 | 個人情報を含む入力は利用目的の範囲内かを十分確認 |
| AI事業者ガイドライン(第1.2版) | 総務省・経済産業省 | 事業者が守るべき基本理念と実践の指針 |
| テキスト生成AIリスク対策ガイドブック | デジタル庁 | リスクを利用形態・プロセス別に整理(行政向けだが参考になる) |
| OWASP Top 10 for LLM 2025 | OWASP | 生成AIを「作る・組み込む」側の技術的リスクの標準 |
IPAが公表した情報セキュリティ10大脅威 2026(2026年1月公開)では、組織向けランキングで「AIの利用をめぐるサイバーリスク」が第3位として初めて選出されました。生成AIのリスクが、もはや一部の先進企業だけの話ではなく、全組織が備えるべき主要脅威になったことを示す指標です。あわせて、総務省・経済産業省が公表したAI事業者ガイドライン(第1.2版)(2026年3月公表・最新版)は、事業者が生成AIを扱ううえでの基本的な考え方を示しており、社内ルールの上位方針として位置づけると整合性がとれます。自社サービスに生成AIを組み込む開発視点では、OWASPが公開する「Top 10 for LLM 2025」が、技術的リスクを体系的に押さえる骨格として有用です。
自社サービスに生成AIを組み込むときのセキュリティ設計
生成AIを「使う」だけでなく、自社の製品やシステムに「組み込む」場合は、開発側ならではのリスクへの設計が必要になります。ここは受託開発の現場で特につまずきやすいポイントです。
- プロンプトインジェクション対策:ユーザー入力や外部データをそのままAIに渡すと、悪意ある指示でシステムの制約を破られる恐れがあります。入力の検証、AIに与える権限の最小化、出力を無条件に信用しない設計が基本です。
- APIキー・認証情報の管理:キーをソースコードに直書きせず、環境変数やシークレット管理の仕組みで扱い、権限は必要最小限に絞ります。流出時に即時失効・再発行できる運用も用意します。
- システムプロンプトの保護:AIに与えている内部指示(システムプロンプト)が引き出されると、仕組みを悪用される足がかりになります。機密情報を指示文に埋め込まない設計が望まれます。
- 社内データを扱うRAGの統制:社内文書を参照させるRAG構成では、参照範囲のアクセス制御を誤ると、権限のないユーザーに機密が返ってしまいます。「誰がどの情報にアクセスできるか」を情報側にも設計します。
- 出力の検証:生成結果をそのまま実行・表示せず、想定外の内容を検知・除去する仕組みを挟みます。
こうした設計は、外部の無防備な利用よりむしろ難易度が高く、要件定義の段階からセキュリティを織り込む必要があります。機密性の高い社内向けAIをセキュアに構築したい場合は、こうした勘所を持つ開発パートナーと組むことで、後戻りの少ない導入が進めやすくなります。
インシデント事例と法的リスク
対策の必要性を実感するうえで、実際の事故事例は参考になります。よく引用されるのが、2023年に大手電機メーカーの半導体部門で起きたソースコード漏洩です。社員が設備の診断コードや社内会議の書き起こしをChatGPTに入力したことで機密が外部に流出し、同社は社内デバイスでの外部生成AI利用を全面禁止するに至ったと報じられました。攻撃を受けたのではなく、業務効率化のための善意の利用が発端だったという点に、生成AIリスクの本質が表れています。
法的な観点では、個人情報を不適切に扱えば個人情報保護法上の責任を問われる可能性があり、生成物が第三者の権利を侵害すれば著作権法上の問題にも発展し得ます。これらは「知らなかった」では済まされないため、入力する情報のルールと出力の確認プロセスを、コンプライアンスの一環として整えておくことが重要です。事例に学ぶべきは「だから禁止」ではなく、「正規利用の中で起きるからこそ、ルールと教育で防ぐ」という設計思想です。
段階的に始めるセキュリティ対策のロードマップ
すべてを一度に整えるのは現実的ではありません。情シス専任がいない企業でも、優先順位をつけて段階的に進めれば十分に対策できます。
- 1現状把握:誰がどのツールを使っているか棚卸しする
- 2土台整備:法人プラン契約と入力禁止情報の明文化
- 3教育:全社員に脅威と最低限のルールを周知する
- 4高度化:ログ監査・DLP・社内向けセキュア環境を整える
まず着手すべきは、費用も体制もかからない「現状把握」と「線引き」です。誰がどのツールを使っているかを棚卸しし、入力してよい情報・だめな情報を一枚のリストにまとめるだけでも、最も起きやすい情報漏洩のリスクは大きく下がります。次に、業務利用を管理機能のある法人プランに集約し、全社員へ最低限のルールと事例を周知します。ここまでで、多くの中堅企業が抱える「野放しの不安」はかなり解消できます。そのうえで、扱う情報の機密度が上がる段階では、ログ監査・DLP・アクセス制御、さらには社内向けのセキュアなAI環境の構築といった高度な対策へ進みます。大切なのは、完璧を最初から目指さず、「被害の大きいところから、できることを順に」埋めていく姿勢です。
よくある質問
無料版のChatGPTを社員が使っています。すぐ禁止すべきですか?
いきなりの全面禁止は、隠れた利用(シャドーAI)を増やし実態が見えなくなるため、必ずしも得策ではありません。まずは「機密・個人情報は入力しない」という最低限のルールを周知し、並行して管理機能のある法人プランなど安全な選択肢を用意して、そちらへ移行させるのが現実的です。安全な道を用意したうえで、無許可ツールへのアクセスを段階的に制限していきましょう。
法人プランなら入力した情報は学習に使われないと考えてよいですか?
多くの法人向けプランやAPIでは、入力データを既定でモデル学習に利用しない旨が各社ポリシーで示されています(本記事執筆時点)。ただし、契約形態や設定、時期によって扱いは変わり得るため、「使われません」と断定せず、導入前に必ず対象サービスの公式なデータ利用ポリシー(プライバシーページやデータ処理契約)で最新の条件を確認してください。
情シスの専任担当がいない中小企業でも対策できますか?
できます。最初にやるべきは高価なツールの導入ではなく、「利用ツールの棚卸し」と「入力してよい情報・だめな情報のリスト化」という、費用のかからない整理です。次に業務利用を法人プランに集約し、全社員へ周知するだけでも、起きやすい事故の多くは防げます。高度な監査やDLPは、扱う情報の機密度が上がってから段階的に検討すれば十分です。
ハルシネーション(誤った出力)はセキュリティ対策で防げますか?
ハルシネーションは仕組み上の限界であり、完全にはなくせません。防ぐべきは「誤りが生じること」そのものより「誤りをそのまま業務に使ってしまうこと」です。数字・固有名詞・法令の内容は人が一次情報で確認する、社外に出す前に責任者がチェックする、といった運用で、誤情報が外部に流れるのを止める設計が現実的な対策です。
自社サービスに生成AIを組み込む場合、特に注意すべき点は?
利用するだけの場合と異なり、プロンプトインジェクション、APIキーの管理、システムプロンプトの保護、RAGでのアクセス制御といった開発側のリスクへの設計が加わります。要件定義の段階からセキュリティを織り込む必要があり、OWASPの「Top 10 for LLM」などの標準を参照しながら、入力の検証・権限の最小化・出力の検証を基本方針に据えるとよいでしょう。
まとめ
生成AIのセキュリティ対策は、外部からの攻撃を防ぐ従来型の発想に、「正規利用の中で起きる漏えい」を防ぐ視点を重ねることが出発点です。情報漏洩・プロンプトインジェクション・ハルシネーション・シャドーAI・アカウント管理・著作権という主要リスクの中でも、まず生成AI 情報漏洩 対策から着手し、入力する情報の線引きと、学習利用を統制できる法人契約への集約を進めるのが効果的です。そのうえで、技術・組織・人の三層を組み合わせ、IPAや個人情報保護委員会、AI事業者ガイドラインといった公的基準に沿って設計すれば、抜け漏れの少ない備えになります。完璧を最初から目指す必要はありません。現状把握とルールの明文化という費用のかからない一歩から始め、機密度に応じて段階的に高度化していくのが現実的です。自社に合ったルール設計や、機密情報を外部に出さない社内向けのセキュアなAI環境の構築については、実務経験を持つ支援会社に相談する選択肢も検討してみてください。
監修者

株式会社APILLOX 代表取締役
山下 雅弘
大阪大学大学院在学中にエンジニアとしてキャリアをスタート。大学院修了後、AIを用いた自動テストツールを開発する企業にエンジニアとして入社し、実装の現場に携わる。その後フリーランスを経て株式会社APILLOXを創業。現在は生成AIの受託開発・新規事業の伴走・業務効率化・法人研修まで、AI活用をワンストップで支援している。自らも手を動かすエンジニアとして、RAGやAIエージェントをはじめとする数多くの生成AI開発・導入の現場に立ち会ってきた。「提案で終わらせず、成果が出るまで実装・運用する」ことを信条とし、本メディアではその実務経験にもとづき生成AI活用の実践的な情報を監修している。




