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医療・介護のAI活用事例|診療・事務・介護現場での生成AIの使いどころ

更新日:2026.07.03

医療や介護の現場でAIをどう活用できるかイメージが湧かない方へ。本記事では医療 AI 活用の事例を領域別に整理し、診療支援・医療事務・介護現場で生成AIが効く場面と、導入手順・費用の目安、プログラム医療機器など法規制の注意点までFAQ付きで解説します。

医療・介護のAI活用事例|診療・事務・介護現場での生成AIの使いどころ

「医療や介護の現場でもAIが役立つと聞くが、診療や記録、事務のどの業務に、どう当てはめればいいのか」——検討はしたいものの、この段階でイメージが湧かず止まってしまう医療機関・介護事業所は少なくありません。慢性的な人手不足に加え、医師の働き方改革による時間外労働の上限規制や、介護分野の担い手不足もあり、限られた人手でケアと事務を両立させる工夫が急務になっています。

本記事では、医療 AI 活用の事例を「領域別のパターン」として整理し、診療支援・医療事務・介護記録などで生成AIが効きやすい場面と、導入を進める手順、プログラム医療機器や個人情報保護など法規制面の注意点までを解説します。テーマは医療・介護の現場に絞ってお届けします。

医療・介護でAI活用が注目される背景

AIに任せられる作業と人が担う領域

生成AIが得意

  • 記録や書類の文章を下書きする
  • 大量の情報から探す・抜き出す
  • 長い記録や申し送りを要約する

人が担う領域

  • 患者や利用者への対人ケア
  • 診療やケアの最終的な判断
  • どこまで任せるかの線引き

医療・介護は、患者や利用者への対人ケアそのものが中核である一方、その周辺に「記録の作成」「書類の作成」「情報の検索・確認」「連絡・調整」といった間接業務が数多くあります。カルテや看護記録、介護記録、紹介状、各種報告書、問い合わせへの対応など、時間はかかるが定型的な作業が、医師・看護師・介護職・事務職に重くのしかかりがちです。

生成AIは、こうした「文章をつくる」「大量の情報から探す・抜き出す」「要約する」作業を素早くこなすことを得意とします。つまり、専門職によるケアや判断そのものを置き換えるのではなく、その周りにある事務・情報処理の負担を軽くする形で、医療・介護のAI活用は現実的な効果を出しやすいと言えます。

同時に、医療・介護は誤りが患者・利用者の不利益に直結する領域でもあります。「どの業務なら任せてよく、どこからは人が判断すべきか」の線引きが、他業界以上に導入の成否を分けます。本記事はこの線引きを意識しながら、活用領域→効きやすい業務→メリットと課題→法規制→導入手順の順に整理していきます。

【領域別】医療・介護のAI活用事例

まず、医療・介護でAIが活用されやすい業務を、代表的なパターンとして整理します。特定の施設名ではなく、多くの現場で共通して見られる「型」として捉えてください。

領域効率化しやすい業務生成AIの活用パターン例
診療・臨床支援診療記録の下書き、文献・院内資料の検索会話や問診メモを基に記録の下書きを生成する
看護・介護記録看護記録・介護記録の作成、申し送りの要約ケア内容のメモから記録のたたき台を作る
医療事務・書類紹介状・各種書類の下書き、案内文の作成定型文書の草案を自動で用意する
患者・利用者対応予約・問い合わせの一次対応、FAQ整備よくある質問に資料を基に回答案を出す
ケア計画ケアプラン原案・アセスメントの整理記録を基に計画書のたたき台を作る
教育・ナレッジマニュアル・研修資料の作成、院内文書検索蓄積した手順や事例を検索できる形にする

いずれも、人手と時間がかかっていた「書く・探す・まとめる」作業が中心です。自院・自施設の業務をこの表に照らすと、着手しやすい候補が見えてきます。

診療・臨床支援での活用

医師や看護師の負担が大きい記録業務では、診察時の会話や問診メモを素材に、診療記録・看護記録の下書きを生成させる使い方が代表的です。ゼロから書くより、たたき台を確認・修正する形にすることで記載時間を圧縮できます。また、院内の手順書や参考資料、公開されている診療ガイドラインなどを横断的に検索し、必要な箇所を要約して示す仕組みは、確認作業の時短に役立ちます。ただし、診療やケアの判断に関わる出力は、必ず専門職が内容を確認することが前提です。

医療事務・書類作成での活用

紹介状や各種案内文、定型的な事務文書の草案づくり、患者・家族からの問い合わせへの一次回答なども、定型性が高く効果が出やすい領域です。よくある質問については、院内の資料を基にした回答案を用意しておくことで、電話や窓口の対応負担を軽くできます。数字や固有名詞を含む書類は、最終的に担当者が確認する運用を組み込むことが欠かせません。

介護現場での活用

介護の現場では、日々の介護記録や申し送りの作成に多くの時間が割かれています。ケア内容の短いメモや音声記録を素材に記録のたたき台を生成し、職員が確認・調整する使い方は、記録業務の負担軽減につながります。ケアプランやアセスメントについても、蓄積した記録を基に原案を整理させ、最終的な内容はケアマネジャーなどの専門職が判断するという分担が現実的です。

患者・利用者対応とケアプランでの活用

問い合わせ対応は、「院内・施設内の資料を根拠に答えさせる」構成にできるかが鍵です。一般的な知識だけで回答させると、自院のルールと食い違う案内をしてしまうことがあるため、診療時間・持ち物・手続きなどの一次情報を整備し、そこから回答させる形にします。ケアプラン支援では、AIが出すのはあくまで「記録を整理した原案」であり、利用者の意向や家族の状況を踏まえた最終判断は専門職が担う、という役割分担を文書化しておくと現場の混乱を防げます。

医療・介護でAIが効きやすい業務の特徴

AIで効果が出やすい業務に共通する特徴

定型文章が繰り返す

記録や書類など書式の決まった文章づくり

探すのに時間がかかる

蓄積はあるが検索しづらい院内資料やマニュアル

要約・整理の負荷が高い

申し送りや長い記録から要点を抜き出す作業

知見が人に偏る

ベテラン依存で共有や教育が課題になる業務

領域をまたいで事例を眺めると、効果が出やすい業務にはいくつかの共通点があります。自院・自施設で対象を選ぶ際の目安になります。

  • 文章づくりが繰り返し発生する:記録・書類・案内文など、書式が決まった文章の作成
  • 文書が多く、探すのに時間がかかる:マニュアルや院内資料など、蓄積はあるが検索しづらい情報
  • 要約・整理の負荷が高い:申し送りや長い記録から要点を抜き出す作業
  • 知見が特定の人に偏っている:ベテランの経験に依存し、共有や教育が課題になっている業務

逆に、診断や治療方針の決定そのものをAIに委ねることは、正確性と安全性が絶対条件となるため慎重な設計と検証が欠かせません。まずは間接業務や情報活用から始めるのが、医療・介護では現実的な入り口になります。

医療・介護のAI活用で得られるメリットと課題

導入judgmentの材料として、メリットと、その裏返しにある課題・限界をセットで押さえておきましょう。良い面だけを見て始めると、運用段階で想定外の負担に驚くことになります。

観点期待できるメリット裏返しの課題・限界
記録・書類業務下書き生成で記載時間を短縮できる出力の確認・修正の工数は残る。確認を省くと誤記が混入する
情報検索院内資料の横断検索で調べる時間を短縮元の資料が古い・未整備だと、誤った回答の温床になる
人材・教育属人的なノウハウを共有しやすくなる「AI任せ」が進むと記録の質や職員の観察力が痩せる恐れ
患者・利用者対応定型的な問い合わせの負荷を軽減緊急性・複雑性の高い相談を人へ引き継ぐ設計が必須
経営残業削減・採用難の緩和につながり得る効果は業務の選び方次第。導入自体が目的化すると回収できない

また、そもそもAI活用に向かないケースもあります。緊急対応のように一刻を争う判断、症例数が少なく前例の蓄積がない判断、患者・家族との信頼関係の構築そのものは、AIに任せる領域ではありません。「向かない業務を最初から除外しておく」ことも、メリットを最大化する重要な判断です。

医療AI活用の法規制|プログラム医療機器と個人情報保護

医療・介護のAI活用では、一般業界にはない規制面の確認が必要です。難しく見えますが、実務では「用途」「入力する情報」「サービスの構成」の3点を整理すれば、確認すべき枠組みはおおむね絞り込めます。

プログラム医療機器(SaMD)への該当性

医薬品医療機器等法(薬機法)では、疾病の診断・治療・予防に使用されることを目的とするプログラムは、医療機器(いわゆるプログラム医療機器)として承認等の規制対象になり得ます。記録の下書きや書類作成、院内資料の検索といった事務・情報整理の効率化は、基本的にこの枠組みの対象外と整理しやすい一方、AIの出力が診断や治療方針の判断に直接寄与する設計に近づくほど、該当性の検討が必要になります。実務では、企画段階で「この機能は診断・治療に関与するか」を仕分けし、迷う場合は薬事に詳しい専門家や規制当局の相談窓口に確認するのが安全です。

個人情報保護法と要配慮個人情報

病歴や診療情報、心身の機能の状態に関する情報は、個人情報保護法上の「要配慮個人情報」に該当し、取得や第三者提供に通常より厳格な扱いが求められます。外部の生成AIサービスに患者・利用者の情報を入力する場合、それが委託に当たるのか、入力データが事業者側で保存・学習に使われないかといった点を、契約・設定の両面で確認する必要があります。厚生労働省は医療・介護関係事業者向けに個人情報の取り扱いに関するガイダンスを示しており、AI利用時もこの延長線上で整理するのが基本です。

医療情報の安全管理に関するガイドライン群

医療情報を扱うシステムについては、厚生労働省の医療情報システムの安全管理に関するガイドラインと、システムを提供する事業者側を対象とした経済産業省・総務省のガイドライン(いわゆる3省2ガイドライン)が実務上の基準になります。クラウド型のAIサービスを使う場合は、ベンダーがこれらへの対応状況を説明できるかが選定の目安の一つになります。

確認項目確認する内容主に関係する枠組み
用途の整理診断・治療の判断に関与するか、事務・記録の効率化にとどまるか薬機法(プログラム医療機器の該当性)
入力する情報患者・利用者の病歴等を含むか、匿名化・仮名化できるか個人情報保護法(要配慮個人情報)
サービスの構成入力データの保存先、学習への利用有無、提供事業者の管理体制医療情報の安全管理に関するガイドライン群
院内・施設内の規程利用ルール・確認フロー・入力禁止情報を文書化したか各施設の情報管理規程・運用ルール

このチェックは導入後ではなく、サービス選定の前に行うのが鉄則です。使い始めてから「この情報は入力できない」と判明すると、業務フローの作り直しになります。

医療・介護でAI活用を進める手順と費用の目安

事例を自院・自施設に当てはめる際は、いきなり全体導入を狙うのではなく、小さく試して広げる進め方が現実的です。おおまかな手順と、費用感の目安を整理します。

ステップ主な内容費用の目安(一般論)
対象業務の選定効果が出やすい業務を洗い出し優先度をつける相談・診断は無償〜小規模なことが多い
試験導入(PoC)一つの業務で小さく試し効果を検証する数十万円〜が一つの目安
本格開発・実装電子カルテ等のデータと連携させて構築する規模・要件により数百万円規模になることも
運用・改善使いながら精度や業務フローを改善し定着させる月額の運用・保守費が発生するのが一般的

上記の金額はあくまで一般的な目安であり、対象業務の範囲、既存システムとの連携の有無、扱う情報の機微さや整備状況によって大きく変わります。正確な費用は、要件を整理したうえで見積もりを取ることをおすすめします。

最初の1テーマの選び方——実務でつまずきやすいポイント

実務でよくあるのが、「診断支援」のような高度なテーマから入ってしまい、規制対応と安全性検証の重さで検討が止まるパターンです。最初の1テーマは、(1)医療的な判断を伴わない、(2)毎日発生していて件数が多い、(3)効果を「かかっていた時間」で測れる——の3条件で選ぶと失敗しにくくなります。定番は記録の下書きか定型書類の草案づくりです。

もう一つつまずきやすいのが、汎用のプロンプトをそのまま使い、自施設の記録書式や用語(略語・職種名・帳票名)を反映しないまま試すケースです。「出力が現場の書式と合わない→手直しが多い→使われなくなる」という流れは非常によく起きます。試験導入の段階で、実際の書式に合わせた出力調整まで含めて検証することが、その後の定着を大きく左右します。

医療・介護のAI活用を現場に定着させる運用のポイント

現場に定着させるための運用のポイント
  • 確認を業務フローに組み込む専門職が確認してから確定する流れを手順化する
  • 利用ルールを1枚に明文化入力可否や相談先を短くまとめ全職員が参照できる形に
  • 一部の職員だけで終えない既存の共有の場に組み込み施設として運用する
  • 効果を測って次に広げる導入前後で比べられる指標を最初に決めておく

導入しても、現場で使われ続けなければ効果は出ません。運用段階で押さえたいポイントを挙げます。

  • 正確性の確認を業務フローに組み込む:生成AIは誤った内容をもっともらしく出力する(ハルシネーション)ことがあります。診療・ケア・書類に関わる出力は、必ず専門職や担当者が確認してから確定する流れを、個人の注意ではなく手順として定めます。
  • 利用ルールを短く明文化する:入力してよい情報・いけない情報、確認の手順、困ったときの相談先を1枚に収め、全職員が参照できるようにします。長大な規程は読まれません。
  • 一部の職員だけの利用で終わらせない:熱心な職員だけが使う状態は、その人の異動・退職で活用が止まります。申し送りや委員会などの既存の場に使い方の共有を組み込み、施設として運用する形に移します。
  • 効果を測って次に広げる:記録にかかる時間や残業時間など、導入前後で比べられる指標を最初に決めておくと、継続・拡大の判断がしやすくなります。

よくある質問

Q. ChatGPTなどの一般向け生成AIに患者・利用者の情報を入力してもよいですか?

個人が無料で使う一般向けサービスに、患者・利用者を特定できる情報や病歴を入力するのは避けるべきです。入力内容がサービス側に保存されたり、モデルの学習に使われたりする可能性があるためです。業務で使う場合は、入力データを学習に利用しない設定・契約が可能な法人向けプランや、医療情報の安全管理ガイドラインへの対応を説明できるサービスを選び、それでも入力する情報は必要最小限・可能な限り匿名化するのが基本です。

Q. AIで作った記録や書類に誤りがあった場合、責任は誰にありますか?

記録や書類の内容に対する責任は、AIではなく作成・確定した人と施設の側に残ると考えて運用を設計すべきです。生成AIの出力はあくまで下書きであり、内容を確認して確定する行為は人が担います。だからこそ「確認せずにそのまま採用しない」ことを手順として明文化し、確認者を決めておくことが重要になります。

Q. プログラム医療機器に該当するかどうかは、どう判断すればよいですか?

出発点は「そのAIの出力が、疾病の診断・治療・予防の判断に使われることを目的としているか」です。記録の下書きや事務書類の作成、院内資料の検索は基本的に該当しない方向で整理しやすい用途ですが、症状から疾患の可能性を提示するなど診断に近づく機能は検討が必要です。境界線上の企画は、開発に着手する前に薬事の専門家や規制当局の相談窓口へ確認することをおすすめします。

Q. 小規模なクリニックや介護事業所でも導入できますか?

できます。むしろ小規模な組織ほど、既製のAIサービスを月額で使い、記録の下書きや書類作成など1業務から始める形が向いています。最初から電子カルテ連携などの開発を伴う構成にする必要はなく、効果を確かめてから連携や自動化に投資する二段階の進め方が、費用リスクを抑えられます。

Q. 電子カルテや介護記録ソフトと連携できますか?

システムによります。外部連携の仕組み(APIやCSV出力など)を持つ製品であれば連携の余地がありますが、可否と条件はベンダーへの確認が必要です。連携できない場合でも、記録の下書きを生成して人が転記する運用から始められるため、「連携できないから何もできない」わけではありません。連携開発は効果が確認できた業務に絞って検討するのが現実的です。

まとめ

医療 AI 活用の事例は、特定の施設名や数値よりも、「どの領域のどんな作業を効率化したか」というパターンで捉えると、自院・自施設への当てはめがしやすくなります。診療記録や看護・介護記録の下書き、書類作成、問い合わせの一次対応、院内資料の検索など、生成AIは「書く・探す・まとめる」作業で効果が出やすいのが特徴です。

一方で、プログラム医療機器への該当性や要配慮個人情報の取り扱いなど、医療・介護ならではの確認事項を導入前に整理しておくことが、後戻りのない進め方につながります。まずは自院・自施設の間接業務を本記事の表に照らし、判断を伴わず件数の多い一つの業務から小さく試すのがおすすめです。個人情報の取り扱いと確認プロセスを整え、効果を実測しながら段階的に広げていく——この進め方が、人手不足に向き合う医療・介護でAI活用を成果につなげる近道になります。

監修者

山下 雅弘

株式会社APILLOX 代表取締役

山下 雅弘

大阪大学大学院在学中にエンジニアとしてキャリアをスタート。大学院修了後、AIを用いた自動テストツールを開発する企業にエンジニアとして入社し、実装の現場に携わる。その後フリーランスを経て株式会社APILLOXを創業。現在は生成AIの受託開発・新規事業の伴走・業務効率化・法人研修まで、AI活用をワンストップで支援している。自らも手を動かすエンジニアとして、RAGやAIエージェントをはじめとする数多くの生成AI開発・導入の現場に立ち会ってきた。「提案で終わらせず、成果が出るまで実装・運用する」ことを信条とし、本メディアではその実務経験にもとづき生成AI活用の実践的な情報を監修している。

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